売買契約書に必ず記載される事項

不動産の売買契約書(正式には「不動産売買契約書」)は、売主と買主の間で取り交わされる重要な法律文書です。宅地建物取引業法に基づき、一定の事項を必ず記載することが義務付けられています。

売買契約書は通常、数ページから十数ページに及ぶ長文の書類です。不明点があれば必ず宅地建物取引士(宅建士)に確認してから署名・捺印しましょう。

重要事項説明書との違い

不動産取引では「重要事項説明書」(通称「重説」)と「売買契約書」の2つの重要文書が存在します。混同されがちですが、それぞれ性質が異なります。

重要事項説明書 vs 売買契約書

重要事項説明書(重説):宅建士が署名・押印し、契約締結「前」に口頭で説明する義務のある書類。物件に関する重要な情報(用途地域・接道状況・設備・心理的瑕疵等)が記載される。

売買契約書:売主・買主双方が署名・捺印する契約文書。「いくらで・いつ・どのような条件で売買するか」を定める。法的拘束力を持つ。

重要事項説明書は「情報開示」のための文書であり、売買契約書は「合意内容」を記録するための文書です。重説で開示された情報に基づいて、売買契約を締結するという流れになります。

手付金の種類と役割

不動産売買では、契約締結時に買主から売主へ「手付金」が支払われます。手付金は売買代金の一部に充当されますが、単なる前払いではなく重要な法的意味を持ちます。

証約手付
契約が成立したことの証拠として授受される手付金。最も基本的な性質。
解約手付
民法557条に基づく解除権を留保する手付金。買主は手付金を放棄、売主は倍額返還することで契約を解除できる。不動産売買では通常この性質を持つ。
違約手付
債務不履行(約束違反)があった場合の違約金として機能する手付金。当事者間の特約で定める。

手付金の相場は売買代金の5〜10%程度です。「解約手付」として機能している場合、売主はいつでも「手付の倍額を返還すること」で契約を解除できます(相手方が履行に着手する前まで)。買主側も手付金を放棄すれば解除できますが、金銭的損失が伴います。

解除条項(ローン特約・違約・合意解除)

ローン解除特約

個人の買主がローンを利用して購入する場合、ローン審査が否決されたときに買主がペナルティなしで契約を解除できる「ローン解除特約(融資特約)」が設けられるのが通常です。ローン否決→特約行使→契約解除→手付金全額返還という流れになります。売主側にとっては、ローン審査の結果次第で契約が白紙になるリスクがある点に注意が必要です。

違約解除と違約金

売主または買主が正当な理由なく契約を不履行した場合は「違約解除」となり、違約金(通常は売買代金の20%)の支払い義務が生じます。売主が期日までに引き渡しできない、買主が残代金を支払わないなどが典型的な違約の例です。

合意解除

双方の合意があれば、いつでも契約を合意解除することができます。合意の内容(手付金の扱い等)は当事者間で決定します。

引き渡し前の物件確認

決済・登記の前後(通常は前日または当日)に、売主・買主・仲介業者が立ち会いの下で物件の最終確認(内覧)を行います。この段階で、契約時と異なる点(設備の故障・破損・残置物など)が発見された場合は、売主に補修や撤去を求めることができます。

訳あり物件で特に注意すべき特約事項

事故物件・雨漏りあり・シロアリ被害・境界不明確・越境物ありなどの訳あり物件では、売買契約書の「特約事項」欄が重要になります。

現状引き渡し特約

「現状のまま引き渡す」という特約を入れることで、既知の不具合について売主の補修義務を免除します。ただし、売主が知っていて告知しなかった不具合については、現状引き渡し特約があっても責任を免れません。

契約不適合責任の免除特約

民法上、売主は引き渡した物件が契約内容に適合しない場合(雨漏り・シロアリ等)は「契約不適合責任」を負います。しかし特約で「引き渡し後〇ヶ月以内に限る」「設備については免責」などと定めることができます。訳あり物件の売却では、この特約の内容が売主にとって非常に重要です。

心理的瑕疵(じんりてきかし)の告知

自殺・孤独死・事件等があった物件は「心理的瑕疵あり」として、不動産業者には重要事項説明で告知する義務があります(国土交通省のガイドライン参照)。告知漏れがあると、後から売買契約の解除や損害賠償を請求されるリスクがあります。

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